- 冬に増えるリスクを、消防庁・消費者庁の数字で見る
- 11月から2月まで、月ごとに何を確かめるか
- 家庭・高齢の家族・小さな職場で、先にやること
- 停電・大雪・断水・地震の最初の30分の動き
- 冬の前に家族と職場で使える確認リスト
結論
冬の備えは、「火」「寒さと入浴」「雪」「電気と水が止まること」の4つに分けると整理しやすくなります。消防庁の統計では、2024年に住宅火災で亡くなった人(放火自殺者等を除く)の75.6%が65歳以上でした。2025年11月から2026年4月の雪による死者72人のうち60人は、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故です。どちらも、高齢の家族がいる家ほど備えの効き目が大きい分野です。
やることを一度に片づけようとせず、11月は点検、12月は家を空ける前の準備、1月は連絡手段の練習と寒波、2月は大雪、と月ごとに分けます。この記事は、冬の備えのコラム10本と緊急地震速報のコラムの要点を1本につなぎ、場面ごとの最初の30分の動きをまとめたものです。細かい手順は、それぞれのコラムに任せます。
冬に増えるリスクを数字で見る
公的機関の公表資料から、冬の備えに関わる数字を拾いました。期間や集計のしかたが資料ごとに違うので、行どうしを足したり比べたりはしないでください。
| リスク | 数字 | 期間 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 住宅の火災 | 11,839件(建物火災の56.5%) | 2024年 | 令和7年版 消防白書 |
| 住宅火災の死者 | 1,030人(放火自殺者等を除く)。うち65歳以上が779人で75.6% | 2024年 | 消防庁「火災の状況(確定値)」 |
| 住宅火災の死者の出火原因 | 原因が分かったものでは、たばこ147人、ストーブ111人が上位 | 2024年 | 同上 |
| ストーブによる火災 | 1,016件(全火災の3%弱) | 2024年 | 消防庁 防災危機管理eカレッジ |
| 建物火災の時期 | 月別では12月が最も多く、冬から春にかけて多い | 2024年 | 令和7年版 消防白書 |
| 高齢者の溺死・溺水 | 65歳以上で8,270人、うち浴槽での事故が6,541人。12月と1月に多い | 2023年 | 消費者庁 |
| 雪による死者 | 72人(うち65歳以上62人)。除雪作業中が60人。月別では1月39人、2月29人 | 2025年11月〜2026年4月(速報値) | 消防庁「今冬の雪による被害状況等」 |
| 雪による死者(その前の冬) | 22人(さらに前の冬は60人) | 2023年11月〜2024年4月 | 令和6年版 消防白書 |
表から読めることは三つあります。一つ目は、火事の被害が高齢者に偏っていることです。住宅火災の死者の4人に3人が65歳以上で、ストーブは原因の分かった死者のなかで、たばこに次ぐ2番目でした。暖房を使い始める11月に、置き場所と警報器を見直す意味がここにあります。
二つ目は、入浴中の事故の大きさです。消費者庁によると、高齢者の溺死のおよそ8割が入浴中で、冬、特に12月と1月に増えます。浴槽での6,541人は1年間の数字で、火災による死者全体(2024年は1,451人)と比べても大きな数です。
三つ目は、雪の被害は年によって大きく変わるものの、亡くなり方の中心は変わらないことです。直近の冬は前の冬の3倍を超える72人で、そのうち1月と2月の2か月で68人でした。除雪作業中が60人、そのうち65歳以上が52人です。雪の少ない地域に住んでいても、雪国の親が一人で雪下ろしをしていないかは、家族として気にかけたい点です。
一酸化炭素中毒は、件数の統計を見つけられなかったので表には入れていません。NITEは、一酸化炭素は無色・無臭で、空気中の濃度が0.02%(200ppm)に上がると頭痛などが起こるとしています。停電中の発電機、雪にふさがれた車のマフラー、換気をしない燃焼式の暖房が、冬に特に注意したい場面です。
冬の電力の需給見通し(予備率など)は、この記事を書いた時点で一次資料を読んで確かめられなかったため、ここでは触れません。家庭の節電の具体的な数字は、コラム「冬の家庭の節電」にまとめています。
11月から2月の備えカレンダー
点検や練習は、きっかけになる日に合わせると続けやすくなります。次の表は、各月のきっかけと、そのときに確かめることを並べたものです。
| 月 | きっかけ | 確かめること | 詳しいコラム |
|---|---|---|---|
| 11月 | 秋季全国火災予防運動(11月9日〜15日) | 住宅用火災警報器のボタンを押して鳴るか、設置から10年を過ぎていないか。ストーブのまわりに燃えやすい物がないか。エアコンのフィルター | 冬の家の2つのリスク/暖房器具の選び方と使い方 |
| 11月 | 暖房を使い始める時期 | モバイルバッテリーのPSEマーク・膨らみ・リコール。ハザードマップで自宅の危険、停電情報のページをブックマーク | モバイルバッテリーの発火を防ぐ/災害時に見る公式の情報源 |
| 12月 | 雪の季節の入り口 | 冬用タイヤ・チェーン・スコップ・毛布を車に。水と食品が家族の人数で何日分あるか | 冬の停電と大雪への備え/家庭と職場の備蓄 |
| 12月 | 年末年始の帰省・長い休み | 帰省先で親の家の警報器と浴室の暖め方を一緒に確かめる。長く留守にする家はプラグを抜く。機内のモバイルバッテリーは2個まで | 冬の家の2つのリスク/冬の家庭の節電 |
| 1月 | 171の体験利用日(1月1日〜3日、1月15日〜21日) | 家族で171を一度試し、伝言を残す番号を1つに決める | 災害時の安否確認は171とweb171で |
| 1月〜2月 | 寒波・大雪の予報 | 予報が出たら外出を減らす。在宅勤務や予定変更を前日に決める。雪下ろしは2人以上で | 冬の停電と大雪への備え |
11月から始めるのは、火災予防運動に合わせると家族や職場で声をかけやすいからです。消防庁は、住宅用火災警報器を定期的に点検し、設置から10年を目安に交換するよう呼びかけています。
12月の帰省は、離れて暮らす親の家を点検できる数少ない機会です。警報器のボタンを一緒に押してみる、脱衣所を暖める手段があるかを見る、といった数分の確認で足ります。国土交通省は2026年4月24日から、機内に持ち込めるモバイルバッテリーを2個までとし、機内での充電もしないよう求めています。
1月と2月は、雪の死者が集中した時期です。気象庁と国土交通省は、大雪が見込まれるときに緊急発表を出し、テレワークも含めて不要不急の外出を控えるよう呼びかけています。171の体験利用日は毎月1日と15日にもあるので、1月に間に合わなければ2月1日か15日でもかまいません。
地震とJアラートは季節を選びません。11月5日の緊急地震速報の全国訓練ではスマホは鳴らない仕組みでした。本番で受け取れるかどうかの確かめ方は、緊急地震速報の訓練の記事にまとめています。
家庭・高齢の家族・小さな職場の優先順位
同じ冬の備えでも、立場によって先にやることが違います。上から順に手をつけてください。
| 順番 | 家庭 | 高齢の家族(離れて暮らす場合も) | 小さな職場 |
|---|---|---|---|
| 1 | 住宅用火災警報器が鳴るか、設置年を見る | 入浴の前に声をかけ、脱衣所と浴室を暖める。湯は41度以下、つかるのは10分まで | 大雪の予報が出たら、在宅勤務や来客の変更を決める人を決めておく |
| 2 | 水と食品を最低3日分(飲み水は1人1日3リットル程度) | ストーブのまわりと服の袖を見る。警報器のボタンを一緒に押す | 速報を知る手段を決める(館内放送、なければスマホが鳴った人が声で知らせる) |
| 3 | 171で伝言を残す番号を家族で1つに決める | 雪下ろしは一人でしない。近所や家族に声をかけて2人以上で | 備蓄の置き場所と期限のリストを作る |
| 4 | 停電したら電熱器具のプラグを抜くと決めておく | 薬の名前・用法・用量をメモしておく | 貸し出しているモバイルバッテリーの点検日を決める |
家庭の1番を警報器にしたのは、住宅火災の死者が多く、点検がボタン1つで終わるからです。2番の備蓄は、首相官邸の防災のページが示す目安で、大規模な災害に備えるなら1週間分です。
高齢の家族の欄は、数字の大きい順に並べました。入浴中の事故と住宅火災は、どちらも亡くなる人の多くが65歳以上です。雪下ろしについて、消防庁は「命を守る除雪中の事故防止10箇条」として、2人以上で作業すること、命綱とヘルメットを着けること、晴れた日ほど屋根の雪がゆるんで危ないことなどを挙げています。
小さな職場では、東京都帰宅困難者対策条例が、従業者の3日分の水や食料の備蓄に努めるよう事業者に求めています(努力義務)。東京都の案内の目安は、1人あたり水9リットル、食料9食、非常用トイレ15回分です。東京都以外の職場は、自治体の案内を確かめてください。
場面ごとの最初の30分
いざというときに読み返す時間はありません。各コラムの内容から、最初の30分にすることだけを抜き出しました。
停電した
- 電気ストーブなど電熱器具のプラグを抜く。避難するなら分電盤のブレーカーも切る
- 石油ストーブなど燃やす暖房は換気とセットで使う。発電機は屋内や車の中で使わない
- スマホは低電力モードなどの省電力の設定にし、家族全員の電池を同時に使い切らない
- 停電の範囲と復旧の見込みは、地域の送配電会社のページで確かめる(復旧時刻は目安)
電気が戻ったら、コードに傷や焦げがないかを見てからブレーカーを入れ、機器は1台ずつ差します。消費者庁は、復旧後の通電火災にも注意するよう呼びかけています。
大雪で閉じ込められた
車の中にいるときは、マフラーのまわりの雪をこまめに取り除き、窓を少し開けて換気します。北陸雪害対策技術センターは、吹雪の中では救助の人などが見える場合を除いて車を離れないこと、救助を求めるときは国道番号と道路わきの地点標で場所を伝えることを案内しています。消防庁は、やむを得ず車を離れるときはドアをロックせず、キーを車内の分かりやすい場所に残すよう挙げています。
家の中にいるときは、外出を控え、FF式の暖房機を使っている家は屋外の給排気口が雪でふさがっていないかを確かめます。雪下ろしは2人以上で、携帯電話を持って行います。消防庁は、晴れた日ほど屋根の雪がゆるんで危ないとしています。
断水した
- 水洗トイレは流さない。便器にゴミ袋をかぶせ、新聞紙などを入れて使う
- 飲み水と、風呂にためた生活用水を分けて使う
- 給水所の場所は自治体の案内で確かめる。水は3リットルで3kgあるので、リュックやペットボトルで運ぶ
- 食事は、湯せんするポリ袋調理と、食器にラップをかぶせる方法で水を節約する
東京都は、集合住宅では配管が壊れていると、流した水が下の階であふれるおそれがあるとしています。寒さは、新聞紙を服の間に入れる、床に段ボールを敷くといった方法でしのげます。
地震が来た
- 緊急地震速報から強い揺れまでは数秒から数十秒。慌てて外に飛び出さない。エレベーターは最寄りの階で止めて降りる。運転中は急ブレーキをかけずにゆるやかに減速する
- 揺れが収まって避難するときは、ブレーカーを切ってから出る
- 安否は171かweb171で、決めておいた1つの番号に残す
- 情報は自治体の避難情報や気象庁など公式のページで確かめ、出どころの分からない投稿は照らし合わせてから動く
無料で開放される無線LAN「00000JAPAN」は暗号化されていないので、つないでいる間はログインやカード番号の入力をしません。電波の状態の確かめ方は、電波が入らないときの記事にまとめています。
Jアラートで弾道ミサイルの情報が流れたときは、屋外なら近くの建物の中か地下に入り、屋内なら窓から離れます。場所ごとの動きは、コラム「Jアラートで弾道ミサイルの情報が出たら」にまとめています。
場面ごとの最初の30分にすること
- 電熱器具のプラグを抜く
- 燃やす暖房は換気とセット
- 発電機は屋内・車内で使わない
→ 戻ったら1台ずつ
- マフラーのまわりを除雪
- 吹雪の中は車を離れない
- 雪下ろしは2人以上で
→ 窓を少し開ける
- 水洗トイレは流さない
- 飲み水と生活用水を分ける
- 水は3リットルで3kg
→ 袋と新聞紙で
- 慌てて外に飛び出さない
- 避難の前にブレーカーを切る
- 安否は171で1つの番号に
→ 情報は公式で確認
まとめと確認リスト
冬の備えは、高齢の家族を中心に考えると優先順位がはっきりします。住宅火災、入浴中の事故、雪下ろしの事故は、どれも亡くなる人の多くが65歳以上だからです。11月に点検、12月に帰省先の確認、1月に171の練習、2月は大雪への用心、と月ごとに一つずつ進めれば、冬が終わるころには一通りそろいます。
停電、大雪、断水、地震の最初の30分にすることは、紙に書いて冷蔵庫や職場の壁に貼っておくと、スマホの電池が切れても見られます。
確認リスト
- 住宅用火災警報器のボタンを押して鳴り、設置から10年を過ぎていないか
- 高齢の家族と、入浴前の声かけと湯の温度・時間の目安を話したか
- 家族の人数で水と食品が3日分以上あるか
- 171で伝言を残す番号を家族で1つに決め、一度試したか
- 車に冬用の装備があり、マフラーのまわりの除雪を家族が知っているか
- 停電したらプラグを抜く、断水したらトイレを流さない、を家族と職場で共有したか
今日、まず確認すること
11月9日からの火災予防運動の間に、自宅と親の家の住宅用火災警報器のボタンを押し、設置年を確かめてください。