- 残業代を計算する前に区別する5つの言葉
- 時間外・休日・深夜の割増率と重なり方
- 1時間あたりの賃金から除ける手当
- 残業代の計算でよくある4つの間違い
結論
残業代は、働いた時間に時給を掛けるだけでは決まりません。まず勤怠の側で、その時間が法定の時間外なのか、休日なのか、深夜なのかを分け、それぞれの割増率を掛けて計算します。だから給与計算の前に、勤怠で勤務の区分を正しく確定させることが何より大切です。
まず区別する5つの言葉
残業代を計算する前に、次の5つを区別します。
- 法定労働時間:原則1日8時間・1週40時間(法律で決まった上限。常時10人未満の商業などの特例措置対象事業場は週44時間)
- 所定労働時間:会社が就業規則で決めた勤務時間
- 時間外労働:法定労働時間を超えて働いた時間
- 休日労働:法定休日(毎週1回、または4週4日の休日)に働いた時間
- 深夜労働:午後10時から午前5時までに働いた時間
所定労働時間が1日7時間の会社で8時間働いた場合、7時間を超えた1時間は「所定外」ですが、1日8時間も週40時間も超えていなければ、法律上の割増は要りません(会社の規程で割増を付けることはできます)。この違いを勤怠で持っていないと、正しく計算できません。
割増率
厚生労働省の説明による、法律で決まった最低の割増率は次のとおりです。
| 区分 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外労働 | 25%以上 |
| 時間外労働のうち月60時間を超える部分 | 50%以上 |
| 休日労働 | 35%以上 |
| 深夜労働 | 25%以上 |
区分は重なります。たとえば時間外労働が深夜に及べば25%+25%で50%以上、休日労働が深夜に及べば35%+25%で60%以上です。月60時間を超える時間外労働の50%以上の割増は、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。
1時間あたりの賃金の出し方
月給制の場合、月給を1か月の平均所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を出し、これに割増率と時間数を掛けます。
このとき、月給のすべてが基礎になるわけではありません。家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、基礎から除くことができます。ただし厚生労働省は、名前ではなく実質で判断するとしており、たとえば全員に一律で払う家族手当や、住宅の種類ごとに定額で払う住宅手当は除けません。
勤怠で区分を確定させてから給与へ
同じ1時間でも、平日の日中か、深夜か、法定休日かで割増率が変わります。これを給与担当者が毎月Excelで時間を見直して分けるのは、手間がかかるうえに間違えやすい作業です。
勤怠の側で、勤務の開始・終了・休憩を記録し、そこから時間外・休日・深夜の区分を確定させ、その確定した時間を給与計算に渡す。この流れにすれば、給与の側では区分ごとの時間に割増率を掛けるだけになります。APOUL KINTAI は、打刻から月末の締めまでを1本にして、確定した勤務実績を渡せる形を目指しています。
計算の例
月給28万円、1か月の平均所定労働時間が160時間の社員を例にします(割増賃金の基礎から除ける手当はないものとします)。
- 1時間あたりの賃金:28万円÷160時間=1,750円
- 時間外労働20時間:1,750円×1.25×20時間=43,750円
- そのうち深夜に及んだ3時間の深夜分:1,750円×0.25×3時間=1,312.5円
深夜の時間外労働は、時間外の25%と深夜の25%が両方かかります。上の例では、時間外の計算に含めた3時間に、深夜の25%を上乗せしています。端数の処理のしかたも、規程で決めておきます。
よくある間違い
- 所定労働時間を超えた時間を、すべて法定の時間外として25%増しにしている(法定内の残業まで割増にしていることに気づいていない)
- 月60時間を超えた部分を、50%ではなく25%のまま計算している
- 全員に同額で払っている手当を、1時間あたりの賃金の基礎から除いている
- 休日労働と時間外労働を同じ区分で数えている
どれも、勤怠の区分があいまいなまま給与計算に進んだときに起きます。
月60時間を超える時間外労働がある月は、60時間を超えた部分だけを50%以上で計算し、60時間までの部分は25%以上のままで計算します。
まとめ
残業代は、法定か所定か、時間外・休日・深夜のどれかを分けてから、それぞれの割増率で計算します。月60時間を超える時間外労働は50%以上で、中小企業にも適用されています。1時間あたりの賃金から除ける手当は名前でなく実質で決まります。勤怠で区分を確定させてから給与へ渡すのが、毎月の再計算を減らす近道です。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。