業務改善

「あの人しかできない」仕事を、渡せる単位に切り分ける

人手が足りない現場ほど、作業はベテランに集まり、その人が休むと止まります。製造・物流・事務の場面を例に、ベテランの仕事を「判断」と「手順」に分け、新しく入った人や短時間で働く人に渡せる単位に切り分ける進め方を説明します。

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この記事で分かること
  • 「あの人しかできない」仕事が生まれる理由
  • 人手不足と属人化が悪循環になる仕組み
  • 作業を渡せる単位に切り分ける3つの手順
  • 切り分けを細かくしすぎないための目安

結論

「あの人が休むと仕事が止まる」状態は、人を1人増やすだけでは変わりません。新しく入った人に渡せる形に、仕事がなっていないからです。最初にやるのは、ベテランが抱えている作業を「判断が要る部分」と「手順で進められる部分」に分け、手順の部分を、始まりと終わりがはっきりした小さな単位に切り分けることです。

判断の部分は、しばらくベテランに残してかまいません。手順の部分がほかの人に移るだけで、ベテランの時間が空き、判断を教える余裕が生まれます。

「あの人が休むと止まる」はなぜ起きるのか

人手が足りない現場では、急ぎの仕事ほど、いちばん早く確実にこなせる人に回ります。ベテランに任せれば今日の出荷は間に合い、今日の書類も締め切りに間に合います。その日だけを見れば、正しい判断です。

問題は、それが毎日続くことです。ベテランの仕事は、段取り・判断・実作業・後片付けがひとまとまりのまま増えていきます。本人にとっては一続きの流れなので、どこからどこまでを人に渡せるのか、本人にも説明しにくくなります。退職や休職、異動が決まってから、その中身の多さに初めて気づくことになります。

人手不足と属人化は、悪循環になりやすい

ベテランに作業が集まると、教える時間がなくなります。新しく入った人は、周りの雑用だけを任されたまま時間が過ぎ、仕事の全体が見えません。何を覚えれば一人前になれるのかが見えない職場では、続ける理由も見つけにくくなります。

人が定着しなければ、作業はまたベテランに戻ります。ベテランの残業が増え、その人自身が疲れて離れてしまえば、現場は一度に止まります。人を増やす努力と並行して、仕事の側を「渡せる形」にしておかないと、この循環からは抜けにくいのです。

作業を「渡せる単位」に切り分ける

1. ベテランの1日を書き出す

まず、ベテランが1日にしていることを、時間の順に書き出します。本人に書いてもらうより、隣で見ている人が聞きながら書くほうが漏れが少なくなります。「準備」「確認」「連絡」のような小さな作業も、1行ずつ書きます。

2. 「判断」と「手順」に印を付ける

書き出した1行ごとに、毎回同じやり方で進むものか、その場の状況を見て決めているものかを分けます。手順の行が、渡せる候補です。判断の行は、何を見て決めているのかと、決めた結果だけを書いておきます。

3. 始まりと終わりを決める

渡す単位は、「何が揃ったら始められるか」「何ができたら終わりか」「終わったことを誰がどう確かめるか」の3つが言える大きさにします。短時間で働く人に渡すなら、その人の勤務時間の中で終わる大きさにそろえます。途中で終わる作業は、次の人への引き継ぎがまた属人化するからです。

手順書の作り方や、ファイルの置き場所の決め方は、「その人しか分からない」業務を減らす最初の5つで具体的に説明しています。

実務ではこうなる

たとえば、倉庫の出荷作業を1人のベテランが朝から担当している場面を考えます。書き出してみると、受注の確認、ピッキングの指示書づくり、在庫が足りないときの振り替えの判断、ピッキング、梱包、送り状の印刷と貼り付け、出荷の記録、という流れだったとします。

このうち、在庫の振り替えは判断の作業なので、ベテランに残します。ピッキングと梱包は「指示書が出ていれば始められ、指定の棚に置いたら終わり」と言えるので、新しく入った人に渡せます。送り状の印刷と貼り付けは、午前だけ働く人に任せられる大きさです。

製造の現場でも考え方は同じです。段取り替えのうち、治具や材料を所定の場所に揃えるところまでは手順で進められます。条件の微調整や試し加工の合否は判断なので、ベテランが持ちます。

事務なら、受注の入力、請求書の発行、問い合わせへの返答を1人が持っているとき、まず入力を切り出し、次に、決まった答えで済む問い合わせを切り出します。値引きや納期の相談のように判断が要るものは残します。

切り分けるときの注意

細かく分けすぎると、渡すたびに説明と確認が増え、ベテランの手間がかえって増えます。説明にかかる時間より作業そのものの時間のほうが長くなる大きさを、1つの単位の目安にしてください。

また、切り分けた作業を誰がいつやったかが、後から分かるようにしておきます。勤怠の記録と並べて見ると、どの時間帯に誰がどの作業を担当していたかが分かり、作業がいつの間にかベテランに戻っていないかも確かめられます。

切り分けた作業のうち、社内でやる必要がないものの見分け方は、正社員がやらなくてもいい仕事を見分けるで扱っています。

まとめ

ベテランへの集中は、人手不足の中で、その日ごとには正しい判断を重ねた結果として起きます。人を増やすのと並行して、ベテランの1日を書き出し、判断と手順に分け、始まりと終わりがはっきりした単位で、手順の部分から渡していきます。手の空いたベテランが判断を教えられるようになると、次の人が育つ余地が生まれます。

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