- 「学習に使われない」だけでは分からない条件
- 学習・保存・アクセス・外部連携・削除を分けて確かめる方法
- 名前を消しても残る情報と、練習用データから試す進め方
結論
議事録を要約したい。問い合わせを分類したい。長い資料から必要な部分を探したい。生成AIは、こうした作業を助ける選択肢になります。
ただし、資料を入力する前には、その資料を外部サービスで扱ってよいかを確認する必要があります。「学習に使われない」という説明だけで、すべての条件が分かるわけではありません。学習・保存・アクセス・外部連携・削除を分けて確かめ、資料の中身も見てから判断します。
なぜ今、確認が必要なのか
IPA(情報処理推進機構)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれました。このランキングは、2025年に発生した事故や攻撃の状況などを基に選定されています。
解説書(組織編)では、組織の許可なくAIを業務利用する「シャドーAI」や、出力を十分に確認せず使うリスクも扱っています。AIは事実と違う内容をもっともらしく書くことがあり、これをハルシネーションと呼びます。
個人で便利に使っているサービスを、そのまま会社の資料にも使えるとは限りません。
学習・保存・共有を分けて見る
AIサービスを確認するときは、少なくとも次の項目を分けて調べます。
| 確認項目 | 知りたいこと |
|---|---|
| 学習への利用 | 入力や出力が、モデルの改善などに使われるか |
| 保存 | 履歴や処理記録が、どの条件で残るか |
| アクセス | 管理者、共有相手、事業者などが何を見られるか |
| 外部連携 | 接続した別サービスへ何が渡るか |
| 削除 | 利用者が消せる範囲と、保持される情報は何か |
確認するのは、実際に使う契約と設定です。同じ製品名でも、個人向けと組織向けで条件が異なる可能性があります。
分からない項目は、推測で埋めず、管理担当者や提供元に確認します。
社内資料をAIに入力する前の3つの確認
顧客名を消せば、入力してよい?
例えば、問い合わせ一覧から氏名を消しても、住所、注文番号、詳しい相談内容が残っているかもしれません。その組み合わせから相手が分かる場合もあります。
また、個人が分からなくても、未公開の価格や取引条件は、社外へ渡してよい情報とは限りません。
「名前を消したか」だけでなく、「資料全体に何が含まれているか」を確認する必要があります。
個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、個人情報を含む内容を生成AIに入力するときは、利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています。本人の同意なく入力した個人データが、応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法律に違反する可能性があるとも示しています。
最初は扱う情報を絞って試す
新しいサービスを試す場合は、公開済みの文章や、実在の顧客情報を含まない練習用データから始める方法があります。
例えば問い合わせ分類なら、架空の問い合わせを数件用意します。分類が目的に合うか、どこで間違えるかを確認してから、業務で使う条件を決めます。
これは、サービスの利用条件や社内ルールの確認を省略できるという意味ではありません。機能の試行と、実際の資料を扱う判断を段階的に進める方法です。質問の書き方は「AIに質問しても答えがずれる。伝えるべき4つのこと」で扱っています。
入力前に確認する四つのこと
確認リスト
- そのAIサービスを業務で使うことが認められているか
- 資料に個人情報、秘密情報、契約上の制約が含まれるか
- 入力情報の保存・利用・共有条件を確認したか
- 出力を確認する担当者が決まっているか
この四つは入力前の確認の入口です。すべてそろっても、情報の漏えいや誤りが起きないと保証されるわけではありません。
今日、まず確認すること
会社で利用を認めているAIサービスと、入力できる情報の範囲を確かめる。