IT基礎

ランサムウェア対策、「バックアップがある」で終わっていませんか?

毎日バックアップしていても、必要な時点のデータを必要な時間内に戻し、仕事を再開できるとは限りません。IPAの経営者向けハンドブックが示す暗号化と持ち出しの両面の脅迫、データだけでは業務が戻らない理由、どこまで戻せばよいかの決め方、本番を壊さない復元確認と記録の例を整理します。

最終確認 2026.10.13約3分で読めます

この記事で分かること
  • 「コピーできた」と「仕事を再開できる」の違い
  • どこまで戻れば仕事を続けられるかを決める2つの質問
  • 本番を壊さずに復元を試す方法と、記録する項目

結論

「毎日バックアップしているので大丈夫」。そう考えていても、実際にシステムが止まったとき、必要なデータを取り出し、仕事を再開できるとは限りません。

確認したいのは、バックアップが存在するかだけでなく、必要な時点のデータを、必要な時間内に戻せるかです。

最近の公式資料が伝えていること

IPAは2026年9月8日、経営者向けのランサムウェア対策ハンドブックを公開し、10日に更新しました。被害を受けた国内の組織への聞き取りを基に、経営者の関与や業務継続、持ち出されたデータへの備えなどの教訓をまとめています。

現在の侵入型ランサムウェア攻撃では、データの暗号化に加え、持ち出した情報を使った脅迫も問題になります。つまり、データを戻せても、情報の持ち出しに関する調査や対応が必要になる場合があります。

「コピーできた」と「仕事を再開できる」は違う

次は架空の例です。

毎晩、受注データをバックアップしている会社があります。ファイルは戻せましたが、データベースやアプリの設定が不足し、受注システムとして使える状態に戻りませんでした。

業務を再開するには、データだけでなく、アプリ、設定、接続先、必要な認証情報なども関係します。認証情報は適切に保護し、復旧時に誰が利用できるかを決めておく必要があります。

「戻せた」には段階がある
バックアップがあるファイルを戻せるシステムが動く仕事を再開できる

データだけでなく、アプリ・設定・接続先・認証情報なども関係します。

業務の担当者と決めておく2つ
何日前までのデータなら立て直せるか何時間止まると大きな支障が出るか

例えば、毎日一回のバックアップでは、その後に登録した注文は含まれない可能性があります。

確かめたいのは、バックアップがあるかだけでなく、必要な時点のデータを、必要な時間内に戻して仕事を再開できるかです。

どこまで戻れば、仕事を続けられる?

二つの質問に答えてみましょう。

  • 何時間・何日前までのデータなら、失っても業務を立て直せるか。
  • システムが何時間止まると、大きな支障が出るか。

例えば、毎日一回のバックアップでは、その後に登録した注文が含まれない可能性があります。復旧に二日かかるなら、その間の受付や連絡をどう進めるかも考えます。

この条件は、システム担当者だけで決めるより、実際に仕事をする担当者と確認すると具体的になります。

本番を壊さず、復元を試す

バックアップの確認は、隔離した検証環境など、本番に影響しない場所で行います。重要な原本へ試しに上書きする方法は避けます。

最初は代表的なデータを選び、内容を確認するところから始められます。ただし、ファイルが一つ開けたことと、システム全体を復旧できることは別です。確認記録には、対象、バックアップ日時、復元にかかった時間、確認できた内容、残った課題を記載します。

また、攻撃を受けた環境へすぐ戻すと、再び影響を受けるおそれがあります。事故後の復旧は、侵害範囲や復旧先の安全性を確認しながら進める必要があります。

止まっている間の仕事も準備する

受注、請求、配送、顧客連絡のうち、何を続け、何を止めるか。代わりの記録方法、連絡手段、判断する人を決めておきます。

代替の連絡先や手順は、停止したシステムの中だけに保存しないことも大切です。

復元確認の記録例

項目記録する内容
対象データ・アプリ・設定の範囲
戻せる時点バックアップの取得日時
所要時間復元開始から利用確認まで
確認結果内容や動作を確認できた範囲
未確認事項不足した設定・依存先など
担当者実施者と、次の対応を決める人

確認リスト

  • 何時間・何日前までのデータなら失っても立て直せるかを、業務の担当者と決めた
  • データだけでなく、アプリ・設定・接続先も戻せるかを確かめた
  • 本番に影響しない場所で復元を試し、所要時間と結果を記録した
  • 止まっている間の記録方法・連絡手段・判断する人を決めた
  • 代替の連絡先や手順を、止まるシステムの外にも置いた

今日、まず確認すること

最後に復元を試した日時と、その確認記録があるかを確かめる。