- クラウド版かデスクトップ版かの3つの判断基準
- それぞれの版が向いている会社の特徴
- 権限や記録を整えても人の確認が要る理由
- 両方使うときに正を決めておく理由
結論
取引書類をクラウド版で保存するか、デスクトップ版で保存するかは、書類を確認する人が1人か複数かで判断します。確認や承認に複数人が関わるなら、誰が何を見られるかを分けられるクラウド版が向きます。1人で完結するなら、パソコン1台の中で完結するデスクトップ版で足ります。台数やパソコンの性能ではなく、書類の周りに何人いるかで決めます。なお、APOULが準備しているE-Fileは、クラウド版・デスクトップ版とも公開予定の段階です。
何を基準に選ぶか
判断のポイントは3つあります。
1つ目は、書類を確認する人数です。経理担当が1人で、届いた請求書や領収書をその人だけが確認して保存している会社では、権限を分ける仕組みはあまり使い道がありません。一方、経理担当が取り込み、上長が金額を確認してから確定する、というように複数人が別の立場で同じ書類に関わる会社では、役割ごとに見られる範囲を分けられる仕組みが業務の流れにそのまま合います。
2つ目は、確認の記録を残す必要があるかどうかです。誰が、いつ、どの書類を確認したか、後から誰が見ても分かる状態にしておきたい場合は、操作の記録が残る仕組みが役立ちます。逆に、そこまでの記録が不要なら、記録の仕組みは負担が増えるだけになりがちです。
3つ目は、どの端末から書類を見たいかです。事務所と自宅など、複数の場所からブラウザで確認したいならクラウド版が扱いやすく、1台のパソコンの中だけで完結させたいならデスクトップ版で十分です。
クラウド版が向いている場合
- 経理・営業・管理者など、複数人が同じ書類を別の役割で確認する
- 誰が何を確認・変更したか、後から記録をたどりたい
- 事務所以外の場所からも書類を確認したい人がいる
複数人が関わる会社では、誰か1人のパソコンに書類が集まっている状態は、その人が休んだ日に業務が止まる原因になります。役割ごとに見られる範囲をあらかじめ分けておけば、確認する人が変わっても同じ流れで業務を続けられます。
デスクトップ版が向いている場合
- 書類を確認・保存する人が実質1人か、ごく少人数
- 書類を自分のパソコンの中だけで完結させたい
- 複数人での権限分けや、確認の記録までは今のところ必要ない
小さな会社や個人事業で、経理も代表者本人が行っている場合は、複数人での権限管理よりも、まずパソコン1台の中で書類が迷子にならないことのほうが優先されます。人数が増えたときに、あらためてクラウド版へ切り替えるという順番でも遅くはありません。
実務ではこうなる
社員5人の会社で、営業が受け取った請求書をスマートフォンで撮影し、経理が金額と支払期日を確認し、最後に代表者が支払いを承認する、という流れを考えます。この場合、書類は3人の手を順番に通ります。誰か1人のメールや個人のパソコンに書類が集まる状態にしてしまうと、その人が不在の日に確認が止まります。役割ごとに見られる範囲をあらかじめ分けておけば、営業は取り込みだけ、経理は金額確認だけ、代表者は承認だけと、担当が変わっても同じ流れのまま業務を続けられます。
一方、社員が1人か2人で、経理も代表者本人が行っている会社では、この3人分の役割分けはそもそも発生しません。むしろ、届いた書類がメールの受信箱・ダウンロードフォルダ・紙の3か所に散らばらないようにすることのほうが実務上の課題になります。この場合は、1台のパソコンの中で日付・取引先・金額をそろえて保存できれば十分で、複数人向けの権限管理を先に整える必要はありません。
会社が成長して確認する人数が増えたら、そのタイミングで改めてクラウド版への切り替えを検討する、という順番でも遅くはありません。最初から人数の見込みより多い機能を用意しておく必要はなく、今の確認体制に合わせて選ぶことが基本になります。
注意点
権限やログの仕組みを整えても、それだけで書類の中身の正しさが保証されるわけではありません。金額や取引先の読み取りにAIを使う場合でも、最終的に内容を確認するのは人です。仕組みを導入したことで確認作業を省略してよい、とは考えないようにしてください。 また、クラウド版とデスクトップ版を将来的に両方使う可能性がある場合は、書類の保存場所が分かれてしまわないよう、どちらを正とするかを先に決めておくと、後で書類を探し直す手間を減らせます。
電子帳簿保存法との関係
請求書や領収書などを電子取引でやり取りした場合、紙に印刷して保存するのではなく、データのまま保存することが求められる場面があります。ただし、検索できる状態にする方法や、訂正・削除の記録の残し方といった具体的な保存要件は制度の細かい話にあたるため、この記事では触れません。自社の取引がどの要件にあてはまるかは、国税庁の案内で確認してください。
個々の製品が電子帳簿保存法の要件を満たすかどうかは、製品ごとに確認が必要です。この記事はクラウド版・デスクトップ版どちらが業務に合うかの判断材料であり、法令への適合を保証するものではありません。
まとめ
クラウド版とデスクトップ版のどちらを選ぶかは、パソコンの性能ではなく、書類を確認する人数と、確認の記録を残す必要があるかどうかで決まります。1人で完結するならデスクトップ版、複数人が関わるならクラウド版が扱いやすくなります。制度上の保存要件は国税庁の案内など一次情報で確認し、この記事だけで判断しないようにしてください。