- どちらか一方に寄せたときに起きること
- 仕事の性質で置き場所を分ける目安
- 道具を選ぶときに考える4つの順番
- 手元で処理して結果だけ共有する形
結論
クラウドとローカルは、どちらか一方に統一する必要はありません。共有・同期・外出先からの利用が要る仕事はクラウドに、速さ・オフライン・秘密の保持・大きなデータの処理が要る仕事は手元の端末に置く。同じ会社の中で両方を使い分けるのが、いちばん無理のない形です。「クラウドに寄せる」「社内に戻す」という二択で考えると、どちらを選んでも不便な部分が残ります。
どちらか一方に寄せると何が起きるか
すべてをクラウドに移した会社では、回線が止まった日に仕事が止まります。営業所の回線工事、出張先のWi-Fi、台風の日の在宅勤務。そのときに見積書のひな形も、過去の請求書も開けないという状態は、月に一度でも起きると業務に響きます。大きなファイルを扱う場面も同じで、動画や高解像度のスキャンをアップロードしてから処理を始める作り方は、回線の速さがそのまま待ち時間になります。
逆に、すべてを社内のパソコンと共有フォルダに置いた会社では、別の問題が出ます。担当者のパソコンの中にしか無いファイルが生まれる、外出先から確認できない、バックアップが誰の担当かはっきりしない。自宅や取引先から見たいという要望が出るたびに、メールにファイルを添付して送ることになり、どれが最新版か分からなくなります。
仕事の性質で分ける
置き場所は、好みではなく仕事の性質で決められます。目安は次のとおりです。
| 仕事の性質 | 向いている場所 | 例 |
|---|---|---|
| 複数人が同じものを見る | クラウド | 予定表、案件の進み具合、社内の連絡 |
| 別の端末から続きをやる | クラウド | 移動中に下書き、会社で仕上げる |
| 履歴を残して戻したい | クラウド | 版が分かれると困る資料 |
| すぐ結果が欲しい | ローカル | 画像の変換、PDFの分割、文字の書き起こし |
| 回線が無い場所で使う | ローカル | 現場、車内、移動中 |
| 外に出したくない | ローカル | 健康診断の結果、給与の資料、契約書の下書き |
| 量が多い | ローカル | 数百枚のスキャン、長い動画 |
この表で迷うものは、たいてい「共有はしたいが、中身は外に出したくない」という仕事です。その場合は、処理は手元で済ませて、できあがった結果だけを共有する形にすると両立します。三十枚の契約書をまとめてスキャンし、必要なページだけ手元で抜き出してから、取引先に渡す一枚だけをクラウドに置く、といった分け方です。
このデータは、どこに置く?
- 複数人が同じものを見る
- 外出先からも開く
- 版がずれると困る
→ クラウド
- 大きいファイルを扱う
- 回線が無くても使う
- 外に出したくない
→ 手元の端末
- 原本は手元に置く
- 共有する分だけ出す
- 戻せる控えを別に持つ
→ 分けて置く
判断の順番
新しく道具を選ぶときは、次の順で考えると迷いが減ります。
- そのデータを、自分以外の誰が見る必要があるか。誰も見ないなら、共有の仕組みは要りません。
- 回線が無いときに使えないと困るか。困るなら、手元で動くものを選びます。
- 外に出ると困る内容が含まれるか。含まれるなら、どこを通ってどこに保管されるかを確認します。
- 一度に扱う量はどれくらいか。量が多いほど、アップロードの待ち時間が効いてきます。
たとえば、五人の設計事務所を考えます(説明のための架空の例です)。図面の受け渡しはクラウドの共有フォルダ、打ち合わせの予定は同期する予定表、現場で撮った写真の整理と、施主に渡す資料へのまとめは手元のパソコン。こうしておくと、現場に電波が届かない日でも写真の整理は進み、事務所に戻ってから共有すれば済みます。全部をクラウドに置いていたら、現場での作業は待ちになっていました。
国外のサーバーに預ける場合は、国内に置く場合と異なる説明や同意が要ることがあります。個人情報を含むデータを扱う前に、個人情報保護委員会の案内を確認してください。
APOUL LCC という考え方
APOULは、この使い分けを製品の作り方の前提にしています。APOUL LCC(Life Connect Cloud)は、クラウドの便利さと、手元で動かすことの速さ・安心感・自由度を組み合わせる考え方です。端末の中で終わる処理は端末の中で終わらせ、共有・同期・連携が必要なところだけをつなぐ。処理のたびにファイルを送信しない作りにしておけば、回線が細い場所でも速度が落ちにくく、外に出したくない書類も扱いやすくなります。
APOULが公開を予定している製品にも、この考え方が入っています。PDFの分割や文字の読み取り、翻訳のように、手元で完結できる処理は手元で行う。予定表や連絡のように、複数の人と同じものを見る必要があるものは同期する。どちらが優れているかという話ではなく、仕事ごとに置き場所が違うというだけのことです。
注意点
手元で処理するほうが安心だと考えて、バックアップまで手元だけにするのは危険です。パソコンの故障、盗難、うっかりの削除は、クラウドを使うかどうかに関係なく起きます。手元で処理する方針と、別の場所に控えを持つ方針は、両立させてください。
また、ローカルで動くソフトも、更新の確認や利用状況の送信など、何らかの通信をすることがあります。「ローカルだから何も送らない」と決めつけず、説明を読んで確かめる習慣をつけておくと、社内で説明するときに困りません。
社内で説明するときは、「この作業は手元で終わる」「この作業は外とやり取りする」を一覧にしておくと早く済みます。担当者が知りたいのは仕組みの名前ではなく、自分の手が止まるのはどんなときか、だからです。
まとめ
置き場所は、道具ではなく仕事の性質で決めます。共有・同期・遠隔からの利用はクラウド、速さ・オフライン・秘密の保持・大量の処理は手元。迷ったら、処理は手元で行い、結果だけを共有する形を試してみてください。どちらか一方に統一することが目的ではなく、それぞれの仕事が止まらないことが目的です。