- 本当の問題は同じ情報の3回登録
- 勤怠・人事・給与の分断で起きる5つの場面
- 数字が合わない原因になる基準日のずれ
- 統合より先に決める順番と確認役
結論
先に結論を書きます。勤怠・人事・給与が別々になっていること自体は問題ではありません。問題になるのは、同じ社員の情報を3回登録していて、変更のときに3回直す必要があることです。直す順番と担当者が決まっていないと、どこかが古いまま残ります。まず「どこが最初に直る場所か」を決めてください。
入社のときに何が起きているか
社員が1人入社したときの流れを追ってみます。よくあるのはこの順番です。
- 人事:氏名、住所、生年月日、入社日、所属、雇用形態を一覧へ入力する
- 勤怠:氏名と社員番号でアカウントを作り、勤務パターンと所定労働時間を設定する
- 給与:氏名、住所、基本給、扶養家族、保険の情報を入力する
氏名は3回、住所は2回、社員番号は2回入力されています。1人の入社で15分程度の作業でも、年に10人入社すれば、それだけで転記が30回起きます。転記が30回あれば、打ち間違いはいつか起きます。
厄介なのは、間違いがすぐには見つからないことです。住所を1文字打ち間違えても、給与は計算されます。分かるのは、年末調整の書類が戻ってきたときや、通勤手当の経路が合わないと気づいたときです。数か月遅れて発覚するため、どこで間違えたのかを探すところから始まります。
5つの場面で起きること
1. 入力ミス
3か所に別々に入力すると、どれが正しいかを判定する基準がありません。人事の一覧では「髙橋」、給与ソフトでは「高橋」、勤怠では「タカハシ」。3つとも同じ人ですが、社員番号で突き合わせないと機械には同じ人だと分かりません。名寄せができないと、集計を作るたびに人が目で確認します。
2. 退職者の削除漏れ
退職の処理は、給与が最後に残ることが多い場面です。最終給与を払うまで給与ソフト側は削除できないため、人事の一覧を先に消すと、給与側に「人事にいない人」が残ります。逆に、勤怠アカウントは誰も消さないまま残りがちです。使われていないアカウントが残ることは、集計のずれだけでなく、社内のシステムに入れる状態が続くという点でも困ります。
3. 部署変更
4月の異動で5人が動いたとします。人事の一覧は異動日に更新されますが、勤怠側の部署は集計の都合で月末に変える運用にしていた、というずれが起きます。すると、その月の部署別の残業時間は、人事の数字と勤怠の数字が合いません。どちらが正しいかではなく、基準日が違うというだけの話なのですが、数字が合わない理由を毎回説明することになります。
4. 給与変更
昇給は、適用月を間違えやすい変更です。4月分(5月支払い)から適用するのか、5月分から適用するのかで金額が変わります。人事側の決裁書には「4月1日付で改定」と書いてあり、給与ソフト側は「5月支払い分から」と入力されている、という食い違いが典型です。人事台帳に適用月を持たせて、そこから給与ソフトへ写す順番にしておくと、確認する場所が1つになります。
5. 権限
3つの仕組みが別々だと、権限も別々に設定されています。総務の担当者が異動したときに、人事の共有フォルダのアクセス権は外したが、給与ソフトのアカウントはそのまま、という状態が生まれます。権限の見直しは、どこかに一覧がないと抜けます。
実務ではこうなる
従業員25人の会社で、9月に1人が入社し、1人が退職し、2人が部署を移ったとします。担当者が触る場所は、人事の一覧、勤怠、給与ソフトの3つ。作業は、入社の登録3か所、退職の処理3か所、部署変更2人分をそれぞれ2か所(勤怠と人事)で4回。合計10回の更新です。
この10回のうち、1回でも抜けると、月末の集計で数字が合いません。合わない原因を探すために、担当者は3つの画面を並べて、25人分を目で突き合わせます。この突き合わせ作業は、会社が大きくなるほど増えます。人数が2倍になると、確認する行も2倍になるからです。
分断の影響は「入力の手間」として数えると小さく見えますが、確認と原因探しの時間として数えると大きくなります。見直すときは、入力時間ではなく月末の確認時間を測ってください。
どう直すか
一度に統合しようとせず、順番を決めるところから始めます。
- 社員情報の元データを1か所に決める(多くの場合は人事台帳)
- 入社・退職・異動・給与改定の4つについて、直す順番を紙に書く
- 各手続きに「最後に確認する人」を1人決める
- そのうえで、連携(CSVの受け渡しなど)ができる部分から自動にする
3番が抜けると、順番を決めても守られません。確認する人は各手続きで同じ人である必要はありませんが、手続きごとに1人に決めます。
統合を目的にすると、移行作業だけで数か月かかります。目的は「変更を1回にする」ことなので、まず順番と担当を決めるだけでも、抜けはかなり減ります。
注意点
システムをつなげば数字が合うようになるわけではありません。基準日の考え方が部署ごとに違えば、つないだあとも合いません。連携の前に、異動日や給与改定の適用日をどの日付で扱うかを決めておく必要があります。
勤怠の記録については、厚生労働省が始業・終業時刻の確認と記録の方法について考え方を示しています。保存期間や対象書類の範囲などの細かい要件は改正されることがあるため、最新の要件は厚生労働省の案内で確認してください。APOULが準備している勤怠も公開予定の段階です。
まとめ
- 分断そのものではなく、同じ情報を3回登録していることが問題です。
- 入力ミスは数か月遅れて発覚するため、原因を探す時間が増えます。
- 退職者は給与が最後に残り、勤怠アカウントが残りやすい形です。
- 部署変更と給与変更は、基準日・適用月のずれが数字の不一致を生みます。
- 統合より先に、直す順番と最後に確認する人を決めます。