- 基本給と手当それぞれが担う役割
- 手当の名前で扱いが決まらない理由
- 給与項目を作るときに確かめる4つの点
- 「全部を手当にする」設計の落とし穴
結論
基本給は給与の中心になる賃金で、手当は特定の理由や条件に対して支払う賃金です。ただし、名前を「手当」にしたからといって、社会保険料や所得税の対象から外れるわけではありません。給与項目の扱いは名前ではなく、何に対して、どんな決まりで支払うかで決まります。
基本給と手当の役割
基本給は、仕事そのものに対して毎月決まって支払う中心の賃金です。手当は、会社ごとに理由を決めて上乗せする賃金で、たとえば次のようなものがあります。
- 役職手当(役職に就いていることに対して)
- 資格手当(特定の資格を持っていることに対して)
- 住宅手当(住まいの費用に対して)
- 家族手当(扶養している家族に対して)
- 通勤手当(通勤にかかる費用に対して)
どの手当を置くか、いくら払うかは、法律で一律に決まっているものではなく、会社が就業規則や賃金規程で決めます。
「手当」という名前だけでは扱いは決まらない
健康保険と厚生年金の保険料は、標準報酬月額をもとに計算します。日本年金機構の説明では、この対象になる報酬には、基本給のほか、役付手当、家族手当、通勤手当、住宅手当なども含まれます。労働の対償として経常的に受けるものは、名前にかかわらず報酬として扱われるということです。
つまり「基本給を下げて、そのぶんを手当にすれば保険料が下がる」ということにはなりません。毎月払う手当は、ほとんどの場合、基本給と同じように保険料の計算に入ります。
所得税でも、通勤手当のように一定の範囲で非課税になるものはありますが、それは手当の名前ではなく、所得税法の決まりに当てはまるかどうかで決まります。
給与項目を作るときに確かめること
新しく手当を作るとき、または名前を変えるときは、項目ごとに次を確かめます。
- 所得税:課税か、一部または全部が非課税か
- 社会保険:標準報酬月額の報酬に入るか
- 割増賃金:残業代の計算の基礎に入るか
- 規程と契約:就業規則・賃金規程・雇用契約にどう書いてあるか
3の割増賃金は見落とされやすい点です。残業代は1時間あたりの賃金をもとに計算しますが、どの手当をその基礎に入れるかには決まりがあり、名前ではなく実態で判断されます。手当を増やすと、残業代の単価も変わることがあります。
「全部を手当にする」設計の落とし穴
基本給を低く抑えて、残りを手当で払う設計には注意が要ります。社会保険料は下がらないうえに、賞与や退職金を基本給の何か月分と決めている会社では、社員の受け取る額が大きく変わります。手当の理由があいまいだと、支給をやめるときにも説明がつきません。
給与項目は、手取りを少し増やせそうだという理由ではなく、「何に対して払う賃金か」をはっきりさせてから作ります。給与計算のシステムの側でも、「手当」をひとまとめにせず、項目ごとに課税・社会保険・割増賃金の扱いを持てる作りが必要です。
よくある質問
Q. 手当を増やすと、社員の手取りは増えますか。 総支給額が増えれば手取りも増えますが、毎月払う手当は多くの場合、社会保険料の計算に入るので、保険料も同じように増えます。基本給で払うか手当で払うかによって手取りが大きく変わる、ということは基本的にありません。
Q. 手当の名前を変えれば、扱いも変わりますか。 変わりません。社会保険でも割増賃金でも、名前ではなく、何に対して、どんな条件で払うかという中身で判断されます。たとえば「住宅手当」という名前でも、住宅の費用に関係なく全員に同じ額を払っているなら、割増賃金の基礎から除くことはできません。
Q. 手当をやめるときに気をつけることは。 手当を減らしたりやめたりすることは、社員にとって不利益な変更になることがあります。就業規則の変更の手続きや、社員への説明が必要です。作るときに「何に対して払うか」を決めておけば、やめるときの理由もはっきりします。
手当を作るときは、支給の条件と、条件を満たさなくなったときの扱いを規程に書いておきます。
まとめ
基本給は中心の賃金、手当は理由を決めて上乗せする賃金です。ただ、名前を手当にしても保険料や税金の扱いは自動で変わりません。手当を作るときは、所得税・社会保険・割増賃金・規程の4つで扱いを1つずつ確かめ、何に対して払うのかを先に決めます。判断に迷うときは、年金事務所や税務署、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
社会保険での具体的な扱いは「住宅手当や通勤手当は、社会保険でどう扱われるのか」で整理しています。