- 控除の基本になる「働かなかった時間の分」
- 実際の時間を超えて引くと減給の制裁になる理由
- 遅刻・早退の控除で規程に書く5つのこと
- 勤怠で時間を確定してから給与で計算する流れ
結論
遅刻や早退で給与を差し引くときの基本は、働かなかった時間に見合う分だけを引くことです。それを超えて引くと、労働基準法の「減給の制裁」に当たり、上限の決まりがかかります。大切なのは、控除の決まりを会社の規程に書き、担当者によって計算を変えないことです。
基本は「働かなかった時間の分」
賃金は働いたことに対して支払うものなので、働かなかった時間については支払わなくてよい、というのが基本の考え方です(ノーワーク・ノーペイと呼ばれます)。遅刻で30分働かなかったなら、30分に見合う賃金を差し引くことができます。
一方、労働基準法第24条は、賃金は全額を支払うことを原則としています。働かなかった時間の分を超えて差し引くことは、この原則との関係で問題になります。
実際の時間を超えて引くと「減給の制裁」
「遅刻1回につき1時間分を引く」「5分の遅刻でも30分単位で切り上げて引く」といった決まりは、働かなかった時間を超えて引く部分が、罰として給与を減らす「減給の制裁」に当たります。
労働基準法第91条は、減給の制裁について次の上限を決めています。
- 1回の額が、平均賃金の1日分の半額を超えないこと
- 総額が、1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えないこと
さらに、減給の制裁をするには、就業規則に定めておく必要があります。罰として引く部分と、働かなかった時間に見合う部分は、分けて考えます。
規程に書いておくこと
遅刻・早退の控除を担当者の判断にまかせると、同じ30分でも人によって引く額が変わります。これを防ぐため、賃金規程に次を決めておきます。
- 控除の単位(1分単位か、それ以外か)
- 1時間あたりの賃金の出し方(月給を何で割るか)
- 対象に含める手当・含めない手当
- 遅刻・早退の証明(交通機関の遅延など)があった場合の扱い
- 減給の制裁を設けるかどうか、設けるならその内容
「この30分はどうする?」と毎月その場で判断する運用は、担当者に仕事がつき、担当が替わると計算が変わります。
勤怠から給与への一貫した流れ
遅刻・早退は、勤怠で正確な時刻を持っておくことが出発点です。
- 勤怠で遅刻・早退の時刻を記録する
- 勤怠を締めて、控除の対象になる時間を確定する
- 給与計算で、規程の計算式を使って控除額を出す
勤怠の側で「何分遅れたか」を確定させ、給与の側では規程に沿った計算式を使うだけ、という分担にすると、担当者によるぶれがなくなります。APOUL KINTAI は、打刻の記録と、打刻を直したときの記録を残し、締めた数字を次の工程に渡せる形を目指しています。
計算の例
月給24万円、1か月の平均所定労働時間が160時間の社員が、ある月に合計45分遅刻したとします。
- 1時間あたりの賃金:24万円÷160時間=1,500円
- 働かなかった時間の分:1,500円×0.75時間=1,125円
この1,125円が、働かなかった時間に見合う控除です。これを「遅刻は30分単位で切り上げる」として1時間分の1,500円を引くと、差の375円は働かなかった時間を超えて引いていることになり、減給の制裁に当たり、就業規則に定めがなければ行えません。
よくある質問
Q. 電車の遅延で遅れた場合も控除しますか。 法律で一律に決まっているわけではなく、会社の規程で決めます。遅延の証明があれば控除しない、と決めている会社もあります。決めたら全員に同じ扱いをします。
Q. 遅刻した日に残業した場合は相殺できますか。 遅れた時間と残業した時間を単純に相殺すると、残業代の計算が変わることがあります。法定労働時間を超えた部分には割増が必要なので、相殺のしかたは慎重に決め、規程に書いておきます。
控除の計算に使う「1か月の平均所定労働時間」は、残業代の計算に使う時間と同じ考え方でそろえておくと、担当者が二つの数字を使い分ける必要がなくなります。規程には、どの時間で割るかも書いておきます。
まとめ
遅刻・早退の控除は、働かなかった時間の分が基本です。それを超えて引く部分は減給の制裁に当たり、1回の額と総額に上限があり、就業規則に定めが要ります。控除の単位や計算方法を規程に書き、勤怠で時間を確定させてから給与で計算する流れにします。規程を作るときは、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
欠勤の場合の考え方は「欠勤控除はどう考える?」で、1時間あたりの賃金の出し方は「残業代はどう計算する?」で整理しています。