- 残業と応援だけで乗り切ることの問題
- 去年の勤怠から繁忙期の山を見積もる手順
- 増える作業を渡せる単位に切る方法
- 平常時と繁忙期で体制を分ける考え方
結論
毎年同じ時期に人手が足りなくなるなら、その不足は予測できます。予測できる不足を、そのたびに残業と応援勤務で埋め続けると、同じ人に疲れがたまり、時間外労働の上限にも近づきます。繁忙期の前に、去年の記録から山の大きさを見積もり、増える作業を「誰にでも渡せる単位」に切り分けておくことが先です。
毎年同じ時期に足りなくなっていませんか
製造なら決算期前の増産、物流や倉庫なら年末やセールの時期の出荷、事務なら年度末の締めや更新の手続き。業種によって時期は違っても、「この時期は毎年きつい」という感覚は、現場の多くの人が持っています。
ただ、その感覚が数字になっていないことがよくあります。去年の12月に部署全体で何時間の残業があったか、どの作業に人が取られたか、と聞かれてすぐに答えられる会社は多くありません。記録がないと、今年の計画も「去年と同じくらい大変だろう」で止まり、準備が後手に回ります。
残業と応援だけで乗り切ることの問題
繁忙期の対応が残業と他部署からの応援だけだと、負担が同じ人に重なります。応援に出した部署では自分たちの仕事が後ろにずれ、繁忙期が終わってから別の山ができることもあります。
もうひとつは、時間外労働には上限があることです。厚生労働省の説明では、36協定で定める時間外労働は、原則として月45時間・年360時間までです。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)に収める必要があります。中小企業には2020年4月から適用されています。一部の業種(建設、運送の運転業務、医師など)は、適用の時期や上限の中身が異なります。
繁忙期に特定の人の残業が集中すると、忙しい月だけでなく、前後の月を合わせた平均でも上限に近づきます。「忙しい1か月だけ頑張れば済む」とは言い切れません。残業が一年中続いている場合の考え方は、残業と人手不足のコラムで扱っています。
自社の36協定で何時間まで定めているか、特別条項を設けているかは、協定書で確認してください。
繁忙期は「採用」より「事前の計画」
繁忙期が見えてから人を探し始めても、間に合わないことが多いです。先にやるのは、山の大きさを見積もることです。
- 去年の繁忙期の勤怠記録から、部署ごと・週ごとの残業時間を出す
- その時期に増えた作業を書き出す(出荷件数、検品、問い合わせ対応、入力作業など)
- 増えた作業を、いつもの担当者でなければできないものと、手順が決まれば他の人でもできるものに分ける
- 平常時に前倒しできる作業を探す(資材の準備、登録情報の更新、手順の見直しなど)
1の記録は、勤怠を日ごとの打刻で残していれば、月ごとの集計から取り出せます。紙の出勤簿や部署ごとのExcelでばらばらに管理していると、ここで時間がかかります。勤怠の記録を後から読める形で残しておくことは、給与計算のためだけでなく、翌年の計画の材料にもなります。
増える作業を渡せる単位に切り分ける
増やす人手が短時間のパートでも、他部署からの応援でも、外部の人でも、最初の数日は「何をすればいいか」を説明する時間がかかります。この時間を短くするには、繁忙期に増える作業を、半日で覚えられる単位に切っておくことです。
たとえば倉庫の出荷なら、ピッキングから検品、梱包、送り状の貼付までを1つの流れで教えるのではなく、梱包だけ、送り状の貼付だけ、と分けて教えられるようにしておきます。欠品のときの連絡や代わりの品の判断のように、判断が要る作業は、いつもの担当者に残します。
外部の力を借りる方法として、派遣や請負もあります。派遣は、派遣会社が雇う人が、自社の指揮命令を受けて働く仕組みです。請負は、請負事業者が自分の労働者に指示し、労務を管理する仕組みで、発注する側が請負の労働者に直接指示することはできません。どちらを考える場合も、作業の切り分けが先にできていると検討しやすくなります。違いは派遣と請負の違いのコラムで整理しています。
平常時と繁忙期で体制を分けて考える
たとえば、30人ほどの物流倉庫で、11月から12月にかけて出荷が増える場面を考えます。平常時の体制のまま繁忙期に入ると、出荷担当の数人に残業が集まります。
体制を分けて考えると、準備はこう変わります。9月に去年の勤怠記録から12月の残業の山を確かめ、10月に梱包と送り状の貼付の手順を1枚ずつにまとめます。繁忙期に入る前に、他部署の人やパートの人に一度その作業をしてもらい、詰まったところを手順に書き足します。繁忙期のシフトは平常時とは別の表として作り、誰がどの作業を受け持つかを先に決めて、共有の予定表に載せておきます。
こうしておくと、繁忙期に入ってからの「誰に何を頼むか」の相談が減ります。いつもの担当者は、判断の要る作業と、新しく入った人の質問への対応に時間を使えます。
まとめ
毎年の繁忙期は、予測できる不足です。残業と応援だけで乗り切ると、同じ人に負担が集まり、時間外労働の上限にも近づきます。去年の勤怠記録から山を見積もり、増える作業を渡せる単位に切り分け、繁忙期の体制を平常時と別に決めておきます。この準備を繁忙期の2〜3か月前に始めると、当日の混乱が小さくなります。
業務の切り分けや、勤怠・引き継ぎの記録の整え方は、APOULのご相談でも扱います(2026年11月1日から受付中)。労務の判断が必要な点は、社会保険労務士にご相談ください。