- 基本給と手当で総支給額が同じでも違う点
- 社会保険ではどちらも報酬になる理由
- 基本給と手当で残業代の単価への響き方の違い
- 払い方を選ぶ前に会社が決める4つのこと
結論
社員に月2万円を上乗せするとき、基本給を2万円上げても、新しい手当を2万円付けても、毎月の総支給額は同じです。けれども会社の制度の上では同じではありません。先に「なぜその2万円を払うのか」を決め、その理由に合う形を選ぶのが安全です。
総支給額が同じでも、同じではない
基本給を上げる方法と、手当を付ける方法の違いは、その2万円がほかの制度の計算に入るかどうかに出ます。多くの会社では、次のものを基本給を基準に決めています。
- 賞与(基本給の何か月分)
- 退職金(退職時の基本給×勤続年数に応じた率)
- 昇給(基本給に率を掛ける)
基本給を2万円上げれば、これらすべてに2万円分の影響が出ます。手当として付ければ、基本給を基準にしている制度には影響しません。どちらが良いかは、その2万円が何のためのものかで決まります。
社会保険ではどちらも報酬になる
一方で、社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料のもとになる標準報酬月額では、基本給か手当かという名前は関係ありません。毎月決まって払う手当は、基本給と同じく報酬に含まれます。
そのため「手当にすれば保険料が上がらない」ということはありません。どちらの方法でも、2万円は報酬として保険料の計算に入るのが基本です。
残業代への響き方
残業代は、1時間あたりの賃金に割増率を掛けて計算します。時間外労働は25%以上、月60時間を超える部分は50%以上の割増が必要です。この1時間あたりの賃金に、どの手当を含めるかには決まりがあります。
家族手当、通勤手当、住宅手当などは、一定の条件のもとで割増賃金の基礎から除けることになっていますが、除けるかどうかは名前ではなく、実際の支給のしかたで判断されます。たとえば家族の人数に関係なく一律に払う「家族手当」は、除けない場合があります。
所定労働時間が変わらなければ、基本給を上げると残業代の単価も上がります。手当の場合は、その手当が基礎に入るかどうかで変わります。
会社が先に決めること
2万円の払い方を選ぶ前に、次を決めます。
- 何に対して払うのか(役割か、資格か、生活費の補助か、全体の底上げか)
- いつまで払うのか(ずっとか、条件を満たす間だけか)
- 賞与・退職金・昇給に反映させたいか
- 残業代の単価に反映させるべきものか
役割や能力に対する恒常的な評価なら基本給、特定の条件がある間だけ払うものなら手当、というのが一つの目安です。手取りを少し増やせそうだから、という理由だけで形を選ぶと、あとで説明がつかなくなります。
数字で比べる
月給25万円(すべて基本給)の社員に、月2万円を上乗せする場合を比べます。会社の規程で、賞与は基本給の2か月分を年2回、昇給は基本給の2%と決めているとします。
| 基本給を2万円上げる | 手当を2万円付ける | |
|---|---|---|
| 毎月の総支給額 | 27万円 | 27万円 |
| 1回の賞与 | 54万円 | 50万円 |
| 翌年の昇給 | 5,400円 | 5,000円 |
| 社会保険の報酬 | 27万円 | 27万円 |
毎月の支給額と社会保険の報酬は同じでも、賞与は1回で4万円、年間で8万円違います。昇給も基本給が基準なら差が開いていきます。どちらが正しいかではなく、会社がその2万円に何を期待しているかで選ぶものです。
決めたことを規程に書く
選んだ方法は、就業規則や賃金規程に書きます。手当なら、支給の条件、金額、支給をやめる条件を書いておきます。書いていない手当は、支給をやめるときに説明がつかず、社員との間で問題になりやすくなります。
社員への伝え方
どちらの形にしても、社員には「何に対して払うのか」を伝えます。役割が増えたことへの評価なら基本給で、期間限定の業務への対価なら手当で、というように理由と形がそろっていれば、社員も納得しやすくなります。逆に、理由を言わずに手当を付けると、あとで支給をやめるときに説明がつかず、不満が残ります。給与の変更は、金額よりも理由の伝え方で受け止め方が変わります。
まとめ
同じ月2万円でも、基本給か手当かで、賞与・退職金・昇給・残業代への響き方が変わります。社会保険ではどちらも報酬になるので、保険料を理由に手当を選ぶ意味はありません。先に支払う理由を決め、就業規則や賃金規程に書いてから運用します。制度を変えるときは、社会保険労務士などの専門家に相談してください。
手当ごとの社会保険の扱いは「住宅手当や通勤手当は、社会保険でどう扱われるのか」で、残業代への響き方は「残業代はどう計算する?」で詳しく整理しています。