- 社会保険の「報酬」に入るものの決まり方
- 通勤手当が非課税でも報酬に入る理由
- 基本給と手当で違いが出るところ
- 給与項目ごとに決めておく5つの扱い
結論
社会保険(健康保険・厚生年金)の保険料は、標準報酬月額をもとに計算します。その対象になる「報酬」は、名前ではなく中身で決まり、給与として毎月支払う住宅手当や通勤手当も含まれます。「基本給20万円+住宅手当2万円」と「基本給22万円」は、会社の賃金制度としては別物でも、社会保険ではどちらも22万円の報酬として見られるのが基本です。
標準報酬月額と「報酬」
健康保険と厚生年金の保険料は、毎月の給与額にそのつど料率を掛けるのではなく、報酬月額をいくつかの等級に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて計算します。
日本年金機構の説明では、この対象になる報酬は、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、通常の生計に充てられるすべてのものです。金銭だけでなく、通勤定期券や食事、住宅など現物で支給するものも含まれます。例として、基本給のほか、役付手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、早出残業手当などが挙げられています。
一方、臨時に受けるものや、年3回以下の賞与は、毎月の報酬には入りません。賞与は別に「標準賞与額」として保険料を計算します。
住宅手当・通勤手当が報酬に入る理由
住宅手当も通勤手当も、会社の決まりにもとづいて毎月決まって支払うものなので、労働の対償として経常的に受けるものに当たります。そのため報酬に含まれます。
通勤手当については、所得税では一定の範囲まで非課税になるため、「税金がかからないなら保険料もかからない」と思われがちです。しかし日本年金機構は、給与規定に定めのある通勤手当は報酬に含まれると明示しています。3か月や6か月分をまとめて支給する場合も報酬に含まれます(各月への割り振り方は年金事務所に確認してください)。
所得税で非課税でも、社会保険では報酬になる。この「税と社会保険で扱いが違う」点が、手当の扱いでいちばん間違えやすいところです。
基本給22万円と「20万円+手当2万円」
社会保険の報酬としては、どちらも22万円です。違いが出るのは社会保険の外側です。
- 残業代:1時間あたりの賃金の計算に、どの手当を入れるかには決まりがあります
- 賞与や退職金:「基本給の何か月分」と決めている会社では、基本給だけが基準になります
- 昇給:基本給に率を掛けて昇給する会社では、手当は上がりません
社会保険料を下げるために手当を増やしても、保険料は変わらず、ほかの制度にだけ影響が出る、ということが起こります。
給与項目に持たせるべき属性
給与計算のシステムでは、「手当」という1つの分類で済ませず、項目ごとに扱いを持たせる必要があります。
- 所得税:課税/非課税/一部非課税
- 社会保険:報酬に入るか
- 労働保険:賃金に入るか
- 残業代:割増賃金の基礎に入るか
- 支給の頻度:毎月か、臨時か、賞与か
項目を新設するたびにこの5つを決めておけば、あとで「この手当は保険料の計算に入っていたか」を調べ直す必要がなくなります。
金額で見る例
たとえば、基本給20万円の人に、毎月2万円の住宅手当と、1万5千円の通勤手当を払っている場合を考えます。
- 社会保険の報酬:20万円+2万円+1万5千円=23万5千円が報酬月額のもとになります
- 所得税:通勤手当は一定の範囲で非課税になるので、課税の対象は通勤手当の非課税分を除いた額になります
同じ人の同じ給与でも、社会保険と所得税で「対象になる額」が違います。給与計算の仕組みで項目ごとの扱いを分けておかないと、どちらか一方で間違えやすくなります。
現物で支給するものも報酬
報酬は現金だけではありません。日本年金機構の説明では、通勤定期券を現物で渡す場合や、食事や住宅を提供する場合も、報酬に含まれます。現物で支給するものは、厚生労働大臣が定める価額などにもとづいて金額に置き換えます。社宅や寮を用意している会社、定期券を会社で買って渡している会社は、この扱いも確かめておきます。
社会保険の報酬の扱いで迷ったときは、年金事務所に問い合わせて確かめてください。
まとめ
社会保険の報酬は名前でなく中身で決まり、毎月払う住宅手当や通勤手当は報酬に含まれます。所得税で非課税の通勤手当も、社会保険では報酬です。手当を作るときは、税・社会保険・労働保険・残業代・支給頻度の扱いを項目ごとに決めておきます。個別の判断は、年金事務所や社会保険労務士に確認してください。
基本給と手当の役割の違いは「基本給と手当は何が違う?」で、上乗せの方法の比べ方は別のコラムで整理しています。